平成19年度施政方針

平成19年度施政方針
記録的な暖冬といわれておりますこの冬も、間もなく終わりを迎えようとしており、五条川を始め町内のそこかしこで、いつもより早い春の息吹を感じる今日この頃となってまいりました。

平成15年4月からのこの四年間、議会関係者の皆様の格別のご理解とご協力によりまして、老人福祉センターへの指定管理者制度導入と施設の活性化の実現、第6次総合計画の策定、大口中学校建設工事の着手、安全・安心のまちづくりへの取組みと犯罪発生件数の減少等の成果を実現することができました。心から厚くお礼申し上げるものであります。

さて、日本経済は、「失われた十年」を経てようやく長期にわたる景気拡大を続けるまでに回復してまいりました。しかし、この「失われた十年」を経る中で、国と地方自治体は多額の債務を抱えることとなり、このような中で、国は平成16年度から地方への税源の移譲、補助金の削減及び地方交付税の見直しを一体のものとして行う三位一体の財政改革を推進してまいりました。

この三位一体の財政改革は、地方財政と地方政策のあり方を地方分権の流れへと大きく変貌させる契機となりました。しかし、国は「分権で地方に自由を与える代わりに自立と責任を求める」という考え方に基づき、さらに一層の改革を進める方針であると言われています。この結果、それぞれの地方自治体は地方分権を担う能力を厳しく問われることとなりました。地方が負わなければならない責任の重さは、地方分権に伴う権限の拡大に比例していくことになるからであります。

このように、地方分権の推進は地方自治体に自主決定と自己責任を求めることとなり、地方自治体はその権限と責任において財政基盤の強化、効率的な行政運営と地域が求める課題に対応するための地方政策の企画立案能力を身に着けなければならないこととなりました。

これまで行政は、制度的に既存の事務事業を見直すということをほとんど行うことはありませんでした。その結果、職員の削減はできず、あわただしく事務処理に追われる中、毎年同じように予算が執行されていくというサイクルを繰り返すことにより、事務事業がストックされ人件費と物件費が常に増大していくという状況が出来上がってきました。

大口町は、これまで地域の活力や企業努力により財政の弾力性を保ち続けることができましたが、今後、経済構造の変化や産業の空洞化、さらには企業の町外への移転等の原因により財政基盤が一気に揺らぐことも考えられます。

しかし実は、景気の変動や産業構造の変化という外的要因だけではなく、事務事業のストックと毎年の予算編成の内容によっては、財政の硬直化が容易に進むことを、私たちは肝に銘じなければなりません。

行財政改革は、財政の弾力性が保たれているうちに厳格に断行することを制度化しておくことが、将来における行政破綻の悲劇を回避することであり、行政のいまを担う者の後代への責任であると考えております。

昨年2月に平成27年度を目標年度とする第6次総合計画を策定し、「みんなで進める自立と共助のまちづくり」を基本理念に、「財政改革」「組織改革」「意識改革」の3つの改革を通じて、1.新しい時代を担う次世代を育む、2.未来へ引き継ぐ環境保全とまちの活力を創造する、3.健康で安心な暮らしと災害や犯罪などに強い社会を創造する、4.人の知恵・技・情報が活きる元気コミュニティを創造する、という4つの観点から将来の大口町の在りようをお示しすることができました。

平成19年度は、平成27年度の目標年度において総合計画に示された大口町の姿を実現することができるよう、財政基盤をさらに強化するための取組みと地域が本当に必要とする課題を解決するための体制を新たに整えていきたいと考えております。「いまを見直し、持続できる明日の大口町を築く」ための基盤整備に平成19年度は取り組んでまいりたいと考えております。

ここで、平成19年度当初予算の概要を述べさせていただきます。

平成19年度当初予算の規模は、一般会計は101億1,000万円、対前年度比22億円、27.8%の増額、特別会計では50億5,360万8千円、対前年度比2億1,267万1千円、4.4%の増額、総額では151億6,360万8千円、対前年度比24億1,267万1千円、18.9%の増額となっております。

一般会計におきましては、大口中学校建設事業として34億2,467万円を計上いたしております。主な内訳としては、第1工区の平成19年度の工事請負費の債務負担分として19億1,200万円、グランド及びプール等の整備を行う第2工区の工事請負費として8億279万2千円及び植栽の工事請負費として4,353万9千円、さらに平成18年度の第1工区の工事の遅れに伴う平成19年度への繰越分4億9,728万9千円となっております。この4億9,728万9千円の平成19年度への繰り越しに伴い一般会計の予算規模が100億円を超えることとなったものであります。また、一般会計では、「いまを見直し、持続できる明日の大口町を築く」ための基盤整備のための予算といたしまして、政策調整管理費に行政評価システム支援業務委託料として、225万2千円、町民参加条例制定のための調査研究費として、132万円、職員管理費に目標管理等の研修委託料として、65万円の合計422万2千円を計上いたしております。一方、集中改革プランによる事務事業の見直しにより、180万2千円の歳入の増加見込みと1,627万8千円の歳出の削減をいたしております。

続きまして、平成19年度の主要な施策につきまして、ご説明をさせていただきます。

第一は、先ほども申し上げましたように財政基盤の強化と地域が本当に必要とする課題を解決するための体制整備の取組みとして、政策形成と行政評価制度の確立を目指したいと考えております。

第二は、「全町農業公園構想」についてであります。

環境、景観、交流、健康及び教育の5つの「K」に集約した農地の持つ多様な機能を活用して、農業の活性化を図り食糧自給率の向上を目的とする「全町農業公園構想」の今後につきましては、これから構想が目指すべき方向やそれに至る道筋と目標を明らかにし、さらなる構想の充実を図るための取組みを行ってまいりたいと考えております。

次に、「住民の参画と参加のまちづくり」についてであります。

従来行政が担当してきた事業領域にNPO 法人等の住民団体が参画又は参加することにより、効率的でさらに質の高いサービスを住民の皆様に提供することを目的に取り組んでまいりましたが、引き続き団体の活動拠点整備のための調査研究を行うとともに、NPO団体の育成及び法人格取得のための支援を図りながら、さらに広範囲な団体のネットワークの構築を目指してまいります。

続きまして、「サイバータウン構想」についてであります。

大口町では、平成13年度から町内におけるブロードバンド網の整備を図ることにより、人と人のコミュニケーションを図るための「誰でも、いつでも、どこからでも」参加できるネットワーク作りに取り組んできました。現在は「サイバータウン構想」第二章「住民サービスの充実」と第三章「住民の参画と参加のまちづくり」の推進に努めているところであり、おおぐちデジタルミュージアムにおけるコンテンツの追加や動画配信などのコンテンツの充実、学校教育の場におけるスクールネット推進事業及び図書館インターネット事業などの実施、町の公式ホームページの更新などに取り組んでまいりました。この「サイバータウン構想」におきましては、引き続き「誰でも、いつでも、どこからでも」参加できるネットワークの更なる充実に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

五番目は、「安全・安心のまちづくり」についてであります。

平成16年8月に自主的な住民の活動として立上げをされました大口町地域安全パトロール協議会を中心に、町民の皆様方のお取組みにより犯罪の防止に努めてまいりました。この結果、平成16年をピークに犯罪発生件数は年々減少を続けており、引き続き住民の皆様とともに犯罪防止のための取組みを推進してまいりたいと考えております。また、災害及び防災対策につきましても、引き続き防災資機材等の充実を中心に対策を進めるとともに、生活全般において安全・安心が確保されるよう行政の広い分野で、「安心・安全のまちづくり」に努めてまいりたいと考えております。

最後に、町民一人一人が豊かさを享受し、豊かな人生を営むことができるよう、いつどこでも誰もが学べる町を実現するために、引き続き「生涯学習構想」の推進を図るとともに、その拠点となるべき大口中学校の平成20年4月の開校に向けて最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

今後、地方分権の流れはますます強くなるものと予想されております。こうした中で、地方自治体はその権限と責任において自ら政策判断を行い、財政運営を行っていかなければならないという重い責任を負うこととなり、今後の取組み如何では大口町の将来に大きな禍根を残すことにもなります。まさに「いまを見直し、持続できる明日の大口町を築く」ための取組みが、いまの私たちに求められているものと言えます。

どうか、このような地方自治体の置かれている状況をご理解いただきまして、今後とも一層のご支援とご協力を賜りますことを、お願い申し上げるものであります。

平成19年3月2日

大口町長 酒井 えい

作成日 2010年4月5日