令和2年度施政方針

令和2年度施政方針

令和2年度 施政方針

1 はじめに

議長さんのお許しを頂きましたので、令和2年度当初予算の提案にあたり、町政運営の基本方針とその概要を申し上げます。
時が過ぎるのは本当に早いもので、私の町長としての2期目の任期は残り2年を切っております。今まで、議会を始め、町民や企業、職員の皆様方のお力添え頂いたことに厚く感謝申し上げるものであります。
さて、昨年は色々なニュースがありましたが、そのうち私の記憶に特に残ったものは、天皇陛下の即位と元号の改元、ラグビーワールドカップの開催、吉野さんノーベル化学賞の受賞、相次ぐ台風による甚大な被害、消費税率の10%への引き上げ、米中の経済摩擦などでしょうか。
米中経済摩擦は一段とエスカレートし、関税報復合戦の様相を呈し、「二頭のゾウが争うとき、傷つくのは草」ということわざがアフリカにはあるそうですが、この影響が他国の景気までにも波及してしまいました。
ある経済学者は、「米中貿易戦争にばかり目を奪われがちである。しかし、この戦争自体の世界経済への実質的影響はそれほど大きいものではない。各国が心理的な嫌気に陥ることでの消費景気の後退は気になるが、データ的には世界経済はアメリカを除いて数年に一度の大変な不況期を迎えている。その主要な原因の一つが中国経済の減速であることは否定できない。」と述べています。
一方、我が国においては、消費税増税により個人消費が若干落ち込み、景気に影響がでておりますが、米中経済摩擦の行方や中国経済の減速の影響、さらには新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大で世界景気へどれだけ影響を及ぼすかも注視していく必要があるのではないかと考えております。
こうした中、令和2年度の予算編成は、歳入においては消費税増税とともに実施された法人町民税率の改正による税収の減、歳出においては引き続き増加傾向にある社会保障費や福祉関連事業費、会計年度任用職員制度の導入に伴う人件費の増加、幼児教育・保育無償化や消費税増税による経費の増加、将来のまちづくりの礎となる道路や橋りょう等の生活基盤整備事業のさらなる推進のために、財政調整基金や明日のまちづくり基金から繰り入れを行い、さらに起債を最大限活用し、大規模な予算措置をいたしました。
なお、本町にとって令和2年度以降、法人町民税の減収や経常経費の増大により厳しい行財政運営を強いられることになります。その状況を乗り切っていくためには、施策の選択や集中により経常経費の見直しを図り、限られた財源を有効活用していかなければなりません。議会を始め、職員、町民の皆様方とともに、このまちの将来像とその実現のための施策をその羅針盤として記している「第7次総合計画及びまち・ひと・しごと創生総合戦略」を念頭において、町政運営に臨んでまいります。

2 行政運営方針

続きまして、行政運営方針であります。
本町においては、今後、財政状況が厳しさを増していく状況にあるため、第7次大口町総合計画に設定した3つの戦略である「若い世代の定住・子育て支援」、「健やかな暮らしづくり」及び「活力ある産業づくり」や個別の施策計画に定めるまちの将来像実現を目指すための政策的経費に財源が重点配分されるように、今まで以上に経常経費を削減していかなければなりません。
我々の責務は、先人の知恵と勇気に習い、次の時代を担う子や孫のために、この大口町の豊かな暮らしを、より良い形で引き継ぐことです。
そのためには、限られた財源を有効に活用するために、実施事業には優先順位を付けたり、既存事業を見直し廃止したりする選択肢も視野に入れ、最小の経費で最大の効果を上げることを強く意識する必要があります。
私は新年賀詞交換会のあいさつで、「士農工商」という言葉の士は武士ではなく、こころざし(志)の志農工商であると言われたことを述べさせていただきました。その意味を次のように説明する方がいます。
『志ある人がいて、次は生命を守り育てるために一番必要な「農」、その次は、生活に必要な道具を作ってくれる「工」、そして、それらの生産物をスムースに流通させてくれる「商」である。「志」とは、本来、公務員が持つべきもので、みんなの意思を税金の形で集めて、みんなの幸福のために使うことを考えるための仕事である』と。
この先においても町民の皆様方に「大口町に住んで良かった。」、「大口町のことを誇りに思う。」など、より幸せを感じていただくために、志を持って『農工商』すべての事業に力を尽くし、行政運営に取り組んでまいりたいと考えています。

3 当初予算案の概要

それでは、令和2年度の当初予算案について申し述べさせていただきます。
一般会計予算は95億円、7つの特別会計予算の合計は、46億6,240万8千円、総額141億6,240万8千円であります。
歳入において令和3年度以降、現状より3億円程度の一般財源が減少すること、歳出においては令和2年度以降、現状より約2億円の経常経費の増額が見込まれることから、合わせて5億円の歳入歳出改善を余儀なくされます。そこで影響が少ない令和2年度から経常経費を削減して備えるために、令和元年度予算をベースに経常経費に対し10%減のシーリングを設定し、各所管課に一般財源を枠配分しました。  
所管課の職員が、その範囲を目安に、また施策の改廃や事務事業の見直しも視野に、経営計画書と予算要求書を作成しました。そして財政担当が集約し、調整をいたしましたが、まだ課題が残る結果となりました。
 今回、財源確保の手段として、財政調整基金と明日のまちづくり基金の取り崩しを約8億7千万円、借入を3億5千万円予定しております。財政調整基金につきましては、令和元年度までは法人町民税10億円を基準として、その差額を繰り入れてまいりましたが、令和2年度については税制改正により基準を7億円とし、その不足分として1億200万円を、公園用地購入に1億6,300万円、企業立地促進事業補助金に6,700万円など、合計3億9,500万円を繰り入れいたしました。
 また明日のまちづくり基金については、将来への投資を継続するため道路整備事業に1億2,700万円、道路・河川排水路維持管理事業に6,900万円、西小学校電気設備等更新工事費に7,000万円など、合計3億4,300万円を繰り入れいたしました。
この繰り入れにより、財政調整基金が、約27億円から約23億円に、明日のまちづくり基金が、約6億7,000万円から約3億3,000万円に、減少することとなります。
 この多額の繰り入れは、一時的で緊急的な措置であります。町民の皆様方に、より良い暮らをしていただく施策を実施するための判断でありますので、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げるしだいです。

4 施策体系とその概要

次に、令和2年度の主な施策について、総合戦略に基づき、説明させていただきます。

(1)若い世代の定住・子育て支援

多くの自治体で少子高齢社会や人口減少が進む中、本町においては増加傾向が続いております。この傾向を活かし、将来にわたってバランスある人口構成を維持させていくために、町民の皆様に、大口町の魅力を知っていただく取り組みとして、シティプロモーション事業を進めてきました。併せて、親子の同居や近居、在勤者の移住定住や空き家対策に対して補助を行い、その結果、同居・近居者で6件、在勤者で7件の補助金申請がありました。少しずつではありますが、子育て世代の移住・定住支援の成果がでてきておりますので、令和2年度も引き続き実施してまいります。
昨年度、3歳未満児の保育園入園希望者の急増による待機児童の発生については、保護者の皆様方にはご心配とご迷惑をお掛けしいたしましたが、西保育園の増改築工事がまもなく完了いたしますので、来年度より受け入れを増やすことが可能となります。
さらには、新たに子育て世代包括支援事業を、保健センターと子育て支援センターで実施していきます。この事業は全ての妊産婦を対象に、母子保健施策と子育て支援施策の両面から、つまり妊娠期から子育て期までの支援が、利用者の目線から見て切れ目なく一貫性のあるものとして提供されるよう、各施設に1名以上のコンシェルジュを配置して「ワンストップ相談窓口」を設けていきます。コンシェルジュは、妊娠・出産・子育てに関する相談業務を通して、妊産婦及び乳幼児の実情を継続的に把握いたします。また、妊産婦や乳幼児等にとって必要なサービスや支援を提供するため、コンシェルジュ同士が連携し合いながら、地域の保健医療や福祉機関との連絡調整を行い、フォローアップをしていく体制につなげてまいります。
 また、将来に夢が持てる確かな学びの推進のため、計画的な教育環境の整備、確かな学力と豊かな発想や感性を持った子どもたちを育む学校教育の推進、そして、サポートルームさくらによる学習支援や奨学金返還支援など、子ども達の誰もが将来に対し夢を持って自らの人生に向き合っていけるように支援してきました。
令和2年度からは新たに愛知県からの派遣指導主事に加え、教育現場の専門的な知識経験を持つ教育職「大口町指導主事」を町費で雇用し、学校教育課の中に配置いたします。これにより課の機能強化を図るとともに、教育現場では若手の教員を見守り・助言をすることにより、教員としての能力も引き上げてまいります。さらには児童生徒に関わる諸問題が多岐にわたり、増加傾向にもあるため、それらの対応をできるようにして、教育環境の改善に努めてまいります。   

(2)健やかな暮らしづくり

いつまでも健康で生き生きと長生きできる安心で幸せな健康長寿社会の実現には、個人と社会環境の両面から健康寿命の延伸をめざす必要があります。
まずは、住民の皆様が、個人でできることは、改めてご自身の生活習慣を見直し、生活習慣病の発症・重症化予防をしていただくことです。自分の体力や筋力、さらには、活動量を知り、自分にあった運動習慣を身につけること、日常生活の中で意識して動いていただくことを重点目標として啓発してまいります。
社会環境面としては、地域のつながりの中で交流を持ち、そのつながりを生かし、元気なまちにするため、地域の活動拠点となる学習等共同利用施設等の改修に努めてまいりました。
今年度は足の具合の悪い方でも2階の集会室へと気軽に上がっていただけるようにと、椅子式の昇降機を余野学共に設置いたしました。令和2年度は外坪学共に設置してまいります。
なお、二ツ屋学共については、老朽化した現施設を取り壊し、地元の皆様が相互交流を行い、地域文化の向上や福祉の増進を図るための拠り所となる集会所の建設に向け、地元の皆様と協議しながら設計を進めてまいります。
次に、今後の大口町、いや日本全体の未来を明るくする希望の光である「地域包括ケアシステム」についてであります。住み慣れた地域で、人生の最期まで、自分らしく、安心して住み続けられることができるよう、医療や介護の専門的なケアに加え、住民同士の支え合いや健康づくりへの取り組みの充実など、地域の包括的な支援やサービス提供体制を確固たるものにしていくため、町民の皆様のご協力を頂きながら一層進めてまいります。

(3)活力ある産業づくり

  私は、先人が培ってきた自立可能なこのまちを、将来の世代に引き継いでいくため、50年後のまちの礎となる、農業をはじめとする産業振興や生活基盤整備の必要性を掲げ、秩序ある土地利用を堅持する中で、積極的な企業誘致に取り組んでまいりました。
 それがやっと2020年度以降に実を結びだし、基幹税である固定資産税が増収となっていく見込みです。
また道路網の整備は、将来展望を持って地道に継続して取り組めば、より良い暮らしの実現につながり、産業も活性化させる、大きな可能性を秘めた「まちづくり」であります。
昨年には、国道41号の6車線化事業も中小口三丁目交差点までが供用され、現在犬山方面に向けての整備が順調に行われています。また、小牧インターチェンジにつながる国道155号につきましても、ようやく愛知県事業により4車線化工事に取り掛かっていただき、本町内において一部工事が進められています。
国道41号や国道155号の整備により、一方では町道内津々線をはじめ町道秋田21号線の交通量が増加し、さらには国道155号に隣接する豊田22号線などの需要増が見込まれる町道につきましても、引き続き拡幅工事を進めてまいります。工事に合わせて、夜間であっても安心して暮らせるまちを目指し、防犯灯の設置も進めてまいります。
柿野橋の架け替え工事については、国の都市防災総合推進事業交付金をいただき、橋台の整備を行っているところです。令和2年度には、橋桁の製作を含め供用に向けて整備を進めているところであります。
町道小口線・役場前線については都市計画道路として計画されてから随分と整備が滞ってしまいました。ようやく地権者の皆様のご理解を得ながら用地の買収を進めていますので、早期の完成に向けて整備してまいります。
また、小規模・中小企業振興条例につきましては、先の議会でお認めいただき、条例を制定することができました。今後は、小規模・中小企業振興会議を設置し、色々な視点による意見をいただくことにより、課題を洗い出し、その解決に向け大口町商工会とさらなる連携を図りながら、小規模・中小企業者の発展に取り組んでまいります。

5.むすび

今年は東京オリンピックが開催されます。オリンピック関連の支出が経済活動を喚起し、GDPを押し上げることが期待されています。しかし、懸念されるのは、50年前の東京オリンピックの後は、不況の始まりであったことです。初めに申し上げましたが、法人町民税率の改正による影響は、改正前に10億円の税収があったとするならば、令和2年度には2億円程度、令和3年度には4億円程度が、改正前に比べ減収となります。もし不況が始まり企業活動に影響するならば、さらに減収を覚悟しなければなりません。
 昨年においては、4,300億円という莫大な経済効果があったと言われているのが、皆さまご存じの、初めて日本で開催されて成功に終わったラグビーワールドカップであります。歴史は繰り返すとは言われますが、2年連続で国際大会が開催されること、50年前と経済・社会の構造が大きく変わっていることを考えると、過去と同じように不況が始まるとは言えないのかもしれません。
話をワールドカップに戻しますが、日本中を熱狂させた日本代表チーム、象徴することば「ONE TEAM(ワンチーム)」、これがチームを支えたとのことでした。外国出身者が多く、様々な言語や文化を持つ選手たちが、まさに「1つ」になって掴んだ初のベスト8でした。
世界のラグビーを統括するワールドラグビーは、「ラグビー憲章」に5つの価値、「情熱」「結束」「品位」「規律」そして「尊重」を掲げています。とりわけ5つ目の「尊重」であります。ラグビーでは、それぞれに特技や長所を活かせるポジションやプレーがあり、個性が異なる15人がひとつのチームをつくる多様性のスポーツであります。自分にはない特徴や個性を持ち、異なる役割を果たしてくれるチームメイトの存在なくしては、チームは戦うことはできません。そしてチームメイトを「尊重」することで力は何倍にもなることでしょう
本町においても、様々な個性や考えを持つ職員一人一人が、他者を尊重し、それぞれのポジションで異なる役割や職務を遂行していかなければ、いかなる困難にも打ち勝つことはできないでしょう。
将来、大口町の税構造が景気に左右されないようにするため、50年前に社本初代町長が行った企業誘致を、再度、積極的に進めてきたことにより、基幹税である固定資産税が徐々に増収となっていく見込みですが、一方では社会保障費等も右肩上がりに増えていきます。
職員の知恵と工夫を町政に活かさなければ、厳しい財政運営をとても乗り切っていくことはできません。私は職員とともに一丸となってこの厳しさを増すであろうフィールドに臨み、行政サービスの向上のため、これまでのやり方にとらわれることなく、効率的な町政運営に努めていきたいと考えております。
 終わりに、議員の皆様を始めとする町民の皆様、そして職員の皆様の一層のご理解とご支援を賜りますよう、重ねて心からお願い申し上げまして、令和2年度の施政方針とさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。

令和2年3月2日

大口町長 鈴木 雅博

 

令和2年度施政方針(PDF 276KB)

更新日 2021年3月2日