令和3年度施政方針

令和3年度施政方針

令和3年度 施政方針

1 はじめに

 議長さんの お許しを頂きましたので、令和3年度 当初予算の提案にあたり、町政運営の基本方針と、その概要を申し上げます。
 『烏兎怱怱』。『烏兎』は、太陽には三本足のカラスが、月には ウサギが棲んでいるという 古代中国の伝説があり、日月、すなわち 太陽と月を、転じて年月を意味しております。『怱怱』は、慌ただしい様子を 表しています。
 私の町長としての 2期目の任期、特に ここ1年が、まさに この四字熟語であります。歳月が慌ただしく過ぎ去っていき、私の任期は残すところ 8ケ月余りとなりました。今まで、議会を始め、町民の皆様、企業、職員のお力添えを頂いたことに対し、心より 感謝を申し上げるしだいであります。
 さて、昨年を 振り返りますと、新型コロナウイルス感染症に始まり、新型コロナウイルス感染症に終わったと、 何はともあれ『コロナ』に尽きるのでは ないでしょうか。
 以後、新型コロナウイルス感染症 については、『コロナ』と 言わせていただきますので よろしく お願い申し上げます。
 昨年の 施政方針時には、この感染症の拡大が 世界景気へ どれだけ影響を及ぼすか、また、米中経済摩擦の行方も 注視していく必要があると述べさせていただきました。
 コロナについては、全世界へ真っ暗な 影を落とすという 最悪の状況となり、これからも 戦いが続いてまいります。
一方では、この感染症により、少し話題に上がらなくは なりましたが、米中 経済摩擦は、まだ 決着がついておりません。アメリカ大統領の 交代により、どのような方向に進むのかを、今後も注視していく必要があると 私も考えております。
 本町に おきましては、消費税の増税、そして、法人町民税率を引き下げる改正、さらには、この感染症という 3つの要因により、過去最大と言っても 過言ではないほど 税収が落ち込む状況と なってしまいました。
 こうした中、令和3年度の予算編成においては、歳入は、コロナの影響による 税収の、大幅な 減の予算を、歳出は、増加する傾向にある社会保障費や福祉関連事業費、将来のまちづくりの礎となる 道路・橋りょう等の 生活基盤 整備事業の推進、これまで『当たり前』であったことが 通用しない「新たな普通」、いわゆる『ニューノーマル』を実現していくための予算を措置いたしました。
 私は、新たな普通、(ニューノーマル) を実現するためには、今までの「当たりまえ」を、一端、ニュートラルにして、新しい ノーマル、普通を考える時間が 必要であると考えます。その間、財政調整基金や 明日のまちづくり基金から繰り入れを行い、さらに起債を 最大限 活用して、進むべき道を考えてまいります。
 本町は、令和3年度以降 しばらく、税収 減による非常に厳しい 行財政運営を強いられます。その状況を乗り切っていくためには、施策の選択や集中、事業の見直しにより、経常経費の削減を図り、限られた財源を有効活用していかなければなりません。
 このまちの将来像と、その実現のための 施策を羅針盤として記している「第7次 大口町総合計画」については、本年度、中間見直しを実施したところです。5年前の 社会経済情勢とは 打って変わり、この中間見直しにより、本町の新たな課題に気づくことができ、施策の目標と、すべき方向を修正いたしました。この見直しをした 総合計画を念頭において、議会を始め、職員、町民の皆様方とともに 町政運営に臨んでまいります。
 また、本町は 令和4年4月に、「町制施行60周年」を迎えることとなります。その記念すべき年が 本町にとって輝かしい年と なるように、準備を着々と進めてまいりたいと思っておりますので、よろしく お願いを申し上げます。

2 行政運営方針

 続きまして、行政運営方針であります。
 昨年の初めから、我が国においても、コロナの感染者が徐々に増加し、経済にも 甚大なる影響が生じる中で、本町においても、国や県と連携しつつ、また、町単独でも 感染拡大の防止と地域経済の活性化との 両立に向けた対策に取り組んでまいりました。
 次の段階としては、『新たな普通』の実現に向け、変革を進めていかなければなりません。令和2年度の減収は、令和3年度以降もボディーブロー のように、じわじわと効いてまいります。その厳しさに耐えるには、強固な腹筋が必要です。すなわち、日ごろからの対策を行い、それに耐えうる備えを しなければなりません。本町には幸い、5年程度なら耐えうることができるであろう 財政調整基がありますが、考えようによっては 5年しかありません。『新たな普通』の実現までには、色々な障害物があろうかとは思いますが、今こそ、強い大口町の 底力を見せる時と考えています。
 私は 新年の仕事始め式で、「今年一年も コロナ対策を考えながらの年となる。日本経済が大打撃を受ける中、今こそ、大口町の職員として真価が問われる年でもある。町民の皆様が 安心して暮らすことができるよう、今まで蓄積してきた 知識や能力を 最大限 発揮し、今年の干支である『丑』のように、地に足をしっかりとつけ、一歩一歩 前進していくことを期待します。」と訓示をいたしました。
 この先においても 町民の皆様が、健康で安全で 安心な暮らしができるよう、「第7次 大口町総合計画」に設定した 3つの戦略である、『若い世代の定住・子育て支援』、『健やかな 暮らしづくり』 及び、『活力ある産業づくり』や、個別の施策計画に定められている まちの将来像の実現を 目指すための政策的経費に 財源を重点配分するために、今まで以上に経常経費を削減し、「やらなければならない事業を しっかりと実施していく、抑えるものは抑える、継続が必要なものは 継続していく。」という 信念のもと、行政運営に取り組んでまいりたいと考えております。

3 当初予算案の概要

 それでは、「令和3年度の 当初予算案」について申し述べさせていただきます。
 一般会計予算は 96億円、7つの特別会計予算の合計は 47億5,761万2千円、総額は 143億5,761万2千円であります。令和3年度は、コロナの影響に伴う 町税の減収を想定いたしました。
 個人町民税については 約1,700万円の減と試算し、法人町民税については 法人税割率の 引き下げの影響も本格化するため、約2億7,800万円の減と いたしました。
したがいまして、町民税は、令和2年度 当初予算と比較すると、約2億9,500万円の 減となっております。
 また、固定資産税については、評価替えに加え、コロナの影響により、償却資産への投資が減少することを想定し、令和2年度 当初予算と比較すると4,900万円の減と なっております。 
 以上のことから、歳入においては、令和3年度は 令和2年度より,3億3,000万円程度、一般財源が 減少することとなり、財源確保の手段として、財政調整基金と、明日のまちづくり基金の 取り崩しを 8億1,400万円、借入を 3億4,100万円 計上しております。
 財政調整基金に つきましては、令和元年度までは 法人町民税10億円を 基準額として、また、令和2年度については 7億円を基準額として、その差額を繰り入れてまいりました。しかし、令和3年度については、法人税割率の引き下げの影響が本格化することを考慮し、基準額を5億円に見直しを いたしました。その不足分として、1億8,100万円を、さらに、西小学校 長寿命化 改修工事 実施設計に6,500万円、企業立地 促進事業 奨励金に 5,200万円、二ツ屋 集会所 施設整備 関連に 1,700万円などを充てるため、合計 5億1,400万円を 財政調整基金から 繰り入れることといたしました。
 また、「明日のまちづくり基金」に ついては、将来への投資を 継続するため街路整備事業に 1億5,000万円、道路整備事業に3,000万円、道路・河川排水路 維持管理事業に 併せて7,000万円、橋りょう維持工事費に 5,000万円を充てるため、合計 3億円を 繰り入れることと いたしました。
 この多額の繰り入れは、町税の 大幅な減収という特殊要因に対する緊急的な措置でございます。
また、コロナの影響も まだまだ続くと考えられますので、町民の皆様が 『新たな普通』においても、コロナ以前と遜色のない暮らしをしていただく施策を 実施するための判断であります。
 一方、歳出においては、コロナの経済対策として地域経済を少しでも早く回復させることを目的とし、先ほど申し上げました 道路整備等の公共事業への積極的な投資を行うべく 予算計上をいたしておりますので、ご理解と ご協力を賜りますよう お願い申し上げるしだいで ございます。

4 施策体系とその概要

次に、令和3年度の 主な施策について、3つの 「まちづくり戦略」に基づき
説明させていただきます。

(1)「若い世代の定住・子育て支援」

 多くの自治体で 少子高齢化や 人口減少が進む中、本町においては、シティプロモーション事業、親子の同居や近居、在勤者の移住定住や 空き家対策に対して補助を行ってきたことにより、子育て世代の 移住・定住支援に、一定の成果をあげてきたこと、企業跡地の開発により、大規模な分譲住宅が建設されたことなどによって、町人口は増加傾向が続いております。
 一方では、分譲住宅の建設や 就業のため、保育園へ子を預けたいという希望者が急増したことなどの要因により、一昨年度は 3歳未満児の待機児童が 発生をいたしました。保護者の皆様方には ご心配とご迷惑を お掛けいたしましたが、西保育園の 増改築工事を実施し、今年度より受け入れ人数を増やし、その解決をしてまいりました。依然として増加傾向にある 0~2歳児の保育を担う保育士の人員確保に 努めるとともに、保育スペースなどの施設整備を図るなど、3~5歳児の保育需要も 含め、引き続き 柔軟に対応してまいります。
 さらには、新たに子育て支援の 中核拠点として設置した「子育て世代 包括支援センター」において、保育園や幼稚園、児童センター及び 子育て支援を行う NPOなどと 連携し、妊娠・出産を経て 子育て期に至るまでの切れ目のない 包括的 かつ、専門的な子育て支援も進めてまいります。
 小学校・中学校においては、児童生徒一人に対し 1台のタブレット端末を貸出し、それを活用した授業を 的確に実施していくため、教員の 指導力 強化や、 端末の学校外での利用を検討し、情報活用能力の向上を 推進してまいります。
また、児童生徒が 安心して学校生活を送ることができるよう、安全で 快適な 教育環境を作るべく、築40年を経過しました 西小学校の長寿命化を図るため、令和3年度に 改修工事の実施設計を行います。
 中学校においては、教科ラウンジの活用を促進する 取り組みに合わせ、学校支援本部の活動と連携し、新たな生徒の 学びの場を設けるように 努めてまいります。

(2)「健やかな暮らしづくり」

 令和3年度、何よりも優先して 実施しなければならないことは、コロナ対策であります。
『新たな普通』の 実現に向け、安全で有効なワクチンを、町民の皆様が 一日も早く接種できるように、最善を尽くしてまいります。
 近年は、生産年齢人口の 減少や 社会保障費の増加といった課題に対応するため、健康寿命の延伸が 重視されております。健康寿命とは、ご存じの通り、『心身ともに自立し、健康的に生活できる期間』、『介護に至らず 自立した生活を送れる期間』のことであります。『いつまでも健康で、いきいきと長生きできる、安心で幸せな 健康長寿社会』の 実現には、環境整備と 個人の意識づけの 両面からのアプローチが必要であります。
 環境整備としましては、地域のつながりの中で交流を持ち、そのつながりを生かした 元気な地域づくりを進めるため、地域活動の拠点である 学習等 共同利用施設等の改修に努めてまいりました。令和3年度は、老朽化した 二ツ屋学習等 共同利用施設を 取り壊し、地域住民の相互交流や、地域福祉の増進を図るための 拠り所となるよう、集会所の 建設を進めてまいります。
 個人の意識づけとしましては、高齢者の健康維持のためには、ご自身の生活習慣を見直し、生活習慣病の 発症・重症化予防に努めていただくほか、他者との 相互関係を伴う活動も重要です。
 内閣府は、高齢者が 年齢にとらわれることなく、自らの責任と能力において自由で 生き生きとした 生活を送ることを推奨しています。(エイジレス・ライフ)例えば、就労活動、地域のボランティア活動や 学習などの 自己啓発活動に 勤しんだりすること などであります。積極的な社会への参加は、新しい友人を得るきっかけや、生活の充実感を与えてくれるほか、介護予防としても有効であり、日常生活の中で 意識して活動していただくことを 重点目標としております。
 本町では、誰もが いつまでも 住み慣れた地域で 生きがいを持ち、たとえ介護が 必要な状態になっても 自らの望む生活を送り続けられるよう、住まいを 真ん中に、医療や介護、介護予防や健康づくり、支え合いを一体的に提供できる『地域包括ケア』の体制づくりに 取り組んでおります。
 団塊の世代が 75歳に達する2025年、さらには、団塊ジュニアが高齢者となる 2040年を見据え、地域の住民の皆様や 様々な団体が、『我が事』として参画し、人と人、人と様々な資源が、世代や分野を超えて『丸ごと』つながるよう、中長期的に 活力ある地域づくりに 町民の皆様の ご協力をいただきながら取り組んでまいります。

(3)「活力ある産業づくり」

 私は、『将来展望を持って 地道に継続して取り組めば、より良い、暮らしの実現につながり、産業も活性化させることができ、より大きな可能性を秘めた「まちづくり」ができる。』という信念のもと、道路整備を進めてまいりました。
 現在、国道41号の 6車線化事業は、中小口三丁目交差点 以北を 犬山方面に向けての整備が行われており、国道155号につきましても、4車線化工事が 順調に進められています。しかし、都市間を結ぶ 幹線道路の41号や 155号の慢性的な渋滞解消がされても、取り付けの町道が 整備されていなければ、車線拡幅の効果が あまりありません。取り付けの町道が スムーズに流れるよう、あわせて、町道の整備も進めてまいります。
 さらに、通学路等の安全を確保するため、町道南北線を はじめとし、歩道の設置や、グリーンベルトの再塗装を行ってまいります。
また、高齢者や 障がいを お持ちの方々が 安全で快適に利用できるように、道路改良や 歩道拡幅事業に あわせて、歩道の段差解消や、バリアフリー化の導入も進めてまいります。また、夜間であっても 安心して暮らせるまちを目指し、防犯灯の設置も 進めてまいります。
 柿野橋の 架け替え工事については、国の 都市防災 総合推進事業 交付金を いただき、橋りょうの整備を行っているところであります。令和3年度には、柿野橋に取り付く 町道野合線の 歩道設置を進めてまいります。
 町道小口線・役場前線については、ようやく地権者の皆様の ご理解が得られたことで用地買収が完了し、昨年度から工事にも 着手してまいりました。
 今後は、早期完成に向けて 整備してまいります。
 また、令和元年12月に 『大口町 小規模・中小企業 振興基本条例』を制定いたしましたが、 今後も より一層、商工会、町内の 商工業 事業者と行政が協力し、商工業の振興を図ってまいります。
 農業に つきましては、今後の農業経営の安定化を図るため、新たな担い手の 育成や、経営の承継を進める方策として、町が関わる形での 新たな農業経営体の創設をしてまいります。

5.「むすび」

 私は、今年こそ、東京オリンピックが 色々な制限がされながらも、開催されると信じております。そして、昨年来、先送りとなっている オリンピック関連の支出が 経済活動を喚起し、GDPを押し上げることも 期待をしております。
 しかし、一方では、コロナに対する不安を 払しょくできず、この感染症が、一体、いつまで 全世界の経済活動に影響を及ぼし、いつになったら 流行以前と同様の経済活動が再開できるのかは 誰も計り知ることはできません。「コロナの収束までの期間は、3年から5年である。」と 言われる方が いらっしゃいます。また、「集団免疫が成立すれば、その時点で収束する。」という考えが合理的であるとも言われています。これらは あくまで推測であり、昨年末には ウイルスの変異種が 既に確認され、ワクチン接種については、これからが 本格的に実施されていく状況であることから、収束までには、さらに年月が 必要かもしれません。
 私は、景気を判断するには、2年半程度、様子を見る必要があると 考えております。企業において、コロナ禍を乗り切るために借りた 融資資金の返済が、再来年より始まり、それが業績に 大きく影響を与えると思うからであります。
 大口町の税構造が 景気に左右されないようにするため、50年前に、社本 初代町長が 行った 企業誘致を、私は、再度、積極的に進めてまいりました。基幹税である 固定資産税は 徐々に増収となってはいるものの、予想だにしない この感染症の影響により、思うように税収が伸びておらず、反対に 社会保障費等は 着実に増えてきているのが 現状であります。昨年も 申しましたが、今こそ、職員の知恵と工夫を 町政に活かさなければ、数年 続くであろう 厳しい財政状況を とても 乗り切っていくことはできません。
 「視座」という言葉を ご存じでしょうか? 視座とは、『物事を認識する時の 姿勢や立場』という意味です。自分の視座を 少し変えると、物事の見え方が 大きく異なってくるはずです。視座を少し変えると、日々の仕事に対する姿勢も変化し、自ずと『気づき』も 増えてくるはずです。厳しい財政状況を乗り切っていくため、知恵と工夫、さらには 姿勢も大切にしながら、職員一丸となって チャレンジを続けてまいります。
 終わりに、議員の皆様、町民の皆様、そして職員の一層の ご理解と ご支援を賜りますよう重ねて 心から お願い申し上げまして、
令和3年度の 施政方針と させて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。

令和3年3月2日
         大口町長  鈴木雅博

更新日 2022年3月2日